【本】文化がヒトを進化させた

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『文化がヒトを進化させた』

こちらの書籍は Joseph Henrich さんが2017年に発行した『The Secret of Our Success: How Culture Is Driving Human Evolution, Domesticating Our Species, and Making Us Smarter 』の翻訳版です。

著者 Joseph さんは、航空宇宙工学と人類学の両方の学位を取得したのち、航空機メーカーのエンジニアとして2年間勤務し、その後カリフォルニア大学で人類学(修士号・博士号)を学びなおし、現在は ハーバード大学教授・ブリティッシュコロンビア大学教授 としてご活躍されています。

そんな彼の20年間にわたる研究の集大成であり、今なお世界中で支持されている名著が『文化がヒトを進化させた』です。

本書を通して、私が幼いころ抱いていた「そもそも私たち (ヒト) はどのように発展したのか?」「今、この時点でエコシステムが振り出しに戻されたとしたら、もう一度人類は優先種として生き残れるだろうか?」というモヤモヤを解消することができました。

Joseph さんの博識っぷりと、作品から滲み出る観察眼や洞察力はまさに感服の至りです。

私たちヒトは、この地球上で他に類を見ないとてもユニークな動物だ。その遺伝的進化の最大の駆動力となってきたのは文化である、という考えのもと、なぜヒトはそのような独自の進化の道を歩むことができたのか、それはいったいどの地点からなのかという、いわば人類の起源、人類の誕生の秘密に迫ろうとするのが本書である。

ーー訳者(今西康子)あとがきーー

本書が伝えたかったこと

本書が伝えたかったこと、それは「文化進化がヒトの遺伝的進化の最大の駆動力であり、これらの相互作用が、文化的適応を高める方向へ遺伝的に選択圧をかけたことで、スキルや習慣を利用できる個体が増えた」ということです。なお、この進化は今でも続いており、何か外的な制約がないかぎり持続していきます。

 

これを少し曲解してやさしく言いかえると、以下のようになります。

ヒトは生まれたときには既に何らかの文化社会が形成されています。例えば、口や舌を器用に使って言葉をうまく話せる人がいたり、情報を伝達するための本や料理をするための道具が発明されていたり、集団内のルールが定められていたり、周りの人と協力する習慣があったりなどです。

これにより生まれつき舌の筋肉が発達していたり、言語を聞き分ける耳や認知能力が備わっていたり、文字や周りの空気を読めるような脳の構造が形成されるようになりました。

この文化的に優れたヒトが多く誕生することで、さらに洗練された文化が生まれます。そしてそれに適合するような遺伝的選択圧がかかることで、より高度なスキルや習慣を利用できるヒトが生まれるのです。

このように「文化進化→ヒト進化→文化進化→ヒト進化」が繰り返されることにより、文化とヒトが互いに刺激しあい、文化 – 遺伝子共進化を続けることとなります。

 

この「文化がヒトを進化させた」というテーマを論じるために、本書ではザックリ以下のような切り口を展開しています。

  • ヒトの身体は個体としてかなり貧弱
  • 他の動物に比べて生まれつき賢いわけでない
  • 社会的能力が高くマネするのが得意
  • 他の動物と異なり一人の知能では何もできない
  • 文化が身体的特徴を変化させた
  • 文化的学習からプレステージ心理が生まれた
  • 人類の自己家畜化により規範心理が芽生えた
  • 社会性と学習性により集団脳が形成された
  • イノベーションを起こす力の本質は集団脳
  • 集団規模/社会的作用/つがい形成が共進化の源

この本を読んで何を感じたか

まず、人類がこれまで作り上げてきた「文化的蓄積」がどれほど偉大であるかを感じることができました。

これまで文化と聞くと、伝統的な儀式や宗教、娯楽や身体活動というイメージがあり、別になくても生きていけるけどあると人生豊かになるよねというオプション的なものとして捉えていました。しかし本書を読んで、私たちの身体や思考は文化によって形成されたものであること、文化がなければ人類が滅んでいたことなどを学び、人間活動の本質は文化なのではないかと考えるようになりました。

そして特に印象に残ったのが「模倣する能力」です。

ヒトは同じ共同体の他者から、考え方/価値基準/社会規範などを学んで身につけ、他の動物に比べ過剰なまでに模倣する傾向があります。この模倣する習慣があるおかげで、言語能力を獲得し、毒物を食べて亡くなることもなく、大規模な社会で他者と協力できるようになりました。

模倣という方法は、他の方法に比べて最適解にたどり着ける可能性が高いため効率が良いです。受験勉強にしてもスポーツにしても初めから自己流で進めるより、自分より少し優れている人のやり方をマネする方が大抵うまくいきます。

例えば、私たちの先祖もその前の世代の調理法やプロセスを模倣することで、病原菌を殺したり適切な毒抜きができるようになりました。(彼らはそれがどういう仕組みで成り立っているのかを理解していません)

宗教や社会規範にも同様のことがいえます。ある一定の縛りの中で形成された思考を模倣することにより、その集団に属する人々のモチベーションが同一ベクトルを指し、それぞれが自己利益のために起こす行動が、よりその社会基盤を強固なものにしていきます。

最後に本書の魅力でもある「豊富なエピソード」についても触れておきます。

ここで書かれている内容のほとんどはJoseph さんの実体験がベースになっており、世界中で出会った民族のエピソードがふんだんに盛り込まれています。とりわけ「現地民との会話 + Joseph さんの心情 + 分析/考察」が巧みに入り組む描写は必見です。

そして本書の本筋とは少しズレてしまいますが、次項で私が個人的に好きだなと感じたエピソードを10個紹介して締めたいと思います。(実際にはここでは書ききれないほどの面白エピソードが包含されておりますので、ぜひ本書を手にとってお手元でご堪能ください)

個人的に好きなエピソード10選

アザラシを食べるのは難しい?

『カナダ北極圏を支配するために、イギリス海軍の最新戦艦と5年分の食料をもって105人の乗組員が旅だったが、冬が近づき海氷に閉じこめられた結果どうすることもできず全滅した』という、ヒトの能力の限界を示したエピソードの文脈で、紹介されたイヌイットの知恵がこちらです。

アザラシを狩る時にはまず、アザラシが呼吸用に使っている孔(氷の割れ目)を見つけることだ。見つけたら、その周りを雪で覆うこと。さもないとアザラシが物音を聞きつけて、呼吸をしに戻って来なくなってしまうからだ。さて、隙間から臭いを嗅いで、呼吸孔として使われていることを確かめたら、カリブーの枝角で作った専用の道具で呼吸孔の形を調べ、それから孔を雪で覆ってしまう。ただし、てっぺんに小さな隙間を残しておいて、そこに水鳥の羽毛をかぶせる。アザラシが戻ってくるとこの目印用の羽毛が動くので、そうしたら、とにかく全体重をかけて孔に銛を突き刺すのだ。銛は、およそ1.5m。動物の腱でできた紐で、穂先がしっかりと取りつけられている。枝角を利用するカリブーは、流木で作った弓で仕留める。銛の石突きは、非常に硬いホッキョクグマの骨で作られている(そう、ホッキョクグマの仕留め方も知らなくてはならない。巣穴で昼寝中のところを狙うのがいい)。アザラシに銛を突き刺したら、アザラシと組み合ってそれを氷上に引っ張り出し、尖ったホッキョクグマの骨でとどめを刺す。

さて、これでアザラシは手に入ったが、これを調理しなければならない。しかし、これほどの高緯度になると薪にする木はないし、流木は稀少だから燃料にするわけにはいかない。安定した火力を得るにはまず、ソープストーンを彫ってランプを作り(そもそも見つけられるか?)、クジラなどの皮下脂肪層からランプ用の油を採り、さらに特殊な苔から灯火をこしらえる必要がある。水も必要になってくる。海水は塩分が凍ったものなので、これを飲み水にするとたちまち脱水症状を起こしてしまう。しかし、古い海水は塩分がほとんど抜けているので、これを溶かせば飲み水になる。もちろんそのためには、色や煌めきから古い海水を見分けなければならない。また、それを溶かすにはスープストーン・ランプ用の油を確保する必要がある。

アザラシを捕獲して調理するという工程はここまで難易度の高いものなのか、と痛感させられたのではないでしょうか。これではイギリスの探検隊が全滅してしまうのも無理はありません。

ヒトは、文化の蓄積(先人からの知恵や物質的恩恵)がない状態で野に放たれると、どれだけ頭脳明晰で高いモチベーションがあっても生きていくのは困難である、ということを学ばされました。

もしあなたが北極を探検する機会があれば、このアザラシの狩り方は最低限知っておいた方が良さそうですね。

十分なカロリーでも餓死してしまう?

オーストラリア内部を探検していたイギリス人3名は、先住民アボリジニー達と仲良くなり、ナルドーという植物の種からつくられるパンの存在を知りました。当時、飢えに苦しんでいた彼らは現地の女性たちのやり方をまねて、ナルドーのパンを焼くようになったのです。

彼らは毎日600gのパンを食べ十分にカロリーを摂取しているにもかかわらず、3人中2人は衰弱して亡くなってしまいました。理由はナルドーは体内で消化されにくいため大量の便が出てしまい、チアミーゼ(ビタミンB1を分解する酵素)によるビタミンB1欠乏症が引き起こされたからです。

これを防ぐためにアボリジニー達は先祖から代々伝わる方法で下処理を行っていました。

まず第一に、挽いて粉にしたナルドーを大量の水にさらす。こうすることで、消化しやすくなるし、ビタミンB1を破壊するチアミナーゼの濃度を下げることができる。第二に、パンを焼くときは、加熱中に直接、灰に触れるようにする。こうすることで、pHが下がってチアミナーゼの分解が進む。第三に、ナルドーの粥は、かならずムールの貝ですくって食べる。こうすると、チアミナーゼの基質との接触が制限され、ビタミンB1の分解反応が抑えられる。

いかがでしょう。現地の人々はビタミンB1やチアミナーゼという言葉すら聞いたことが無いにも関わらず、この巧妙な毒抜きを行っていたのは驚きですよね。

本書でナルドーのパンの味は悪くないと書かれていたので、私もオーストラリア内部を探索する機会があれば食べてみたいと思います。

指導者が同性だと成績があがる?

学習バイアスを示すために著者 Joseph さんの同僚が、学生・教科課程・指導者に関するデータセットを分析した結果がこちらです。

民族や人種を同じくする指導者につくと、中途退学率が下がって成績が上がることを証明したのだ。コミュニティ・カレッジのアフリカ系アメリカ人の学生の場合、アフリカ系アメリカ人の指導者が担当すると、クラスの中途退学率が6%低下し、B以上の成績取得者が13%増えた。同様に、フロリアンらのチームは、トロント大学の一年生のデータを用いて、同性の指導者につくと学生の成績がわずかに上がることも明らかにした。

(サンプル数が少ないため何とも言えませんが)民族・人種・性別などを共有する指導者のもとでは、受け手の意欲が変化し、それが結果に影響することが示されたのは面白いですよね。

もしあなたのお子さんが塾や家庭教師を検討されていて、似た能力の先生から一人を選ぶ場合には、その子のバックグラウンドに近しい人を選択すると良いかもしれません。

どうして青い瞳が生まれた?

世界中、ほとんどの人々の瞳の色は茶色ですが、北欧のバルト海を中心とする地域だけは青や緑など、瞳の色がうすい人々が存在します。この理由を説明した文章がこちらです。

赤道付近の地域では、年間を通して強い日差しが降り注ぐので、メラニン色素の多い黒い肌の個体のほうが自然選択において有利になる。なぜかというと、紫外線(UVAやUVB)をメラニン色素で吸収しなければ、皮膚の葉酸が破壊されてしまうからである。(略)

赤道から遠く離れた地域に暮らしていれば、強い紫外線が葉酸に及ぼす影響を心配する必要はない。ところが、新たな問題が持ち上がった。肌が黒いとビタミンDが不足しがちになるのである。私たちの体はUVBを利用してビタミンBを合成している。日照量の少ない高緯度地域では、黒い肌のメラニンがUVBを遮りすぎて、ビタミンDの合成を阻害してしまうのだ。(略)高緯度地域でビタミンDが欠乏した結果、白い肌の遺伝子をもつ個体が自然選択において有利になった。メラニン色素の少ない白い肌ならば、UVBを最大限に利用してビタミンDを合成できるからである。(略)

皮膚のメラニンの生成を抑制するルートはいろいろあるからだ。そのような遺伝子の一つが、15番染色体上にあるHERC2という遺伝子である。(略)このHERC2遺伝子は、皮膚の色に関与する他の遺伝子とは違って、皮膚のメラニンだけでなく虹彩のメラニン色素の量も減らすので、瞳の色も薄くなってくる。

瞳の色がうすい理由をメラニン色素や遺伝子レベルまで紐解いて、一般人にもわかりやすく示してくれているのが有り難いですよね。

私の周りには自分の瞳の色がうすいことを自慢してくる友人がいるのですが、今度自慢された際には「へーそっか!じゃあ HERC2遺伝子 によって虹彩のメラニン色素の量が減ってるんだね」とドヤ顔で返答することにします。

トウモロコシにはあえて灰を混ぜる?

主食をトウモロコシに依存しすぎるとナイアシン(ビタミンB3)不足を招くおそれがあり、ペラグラという最悪死に至るような病気が誘発されてしまいます。

そんな中著者 Joseph さんは、チリ南部の先住民マブジェ族がトウモロコシの伝統料理を作る際に、灰を混ぜていたことを目にしました。実はこのマブジェ族の習慣は理にかなっているのです。

実は、トウモロコシにもナイアシンが含まれているのだが、結合型ナイアシンの形で含まれていて、通常の調理法ではなかなか吸収可能な形にならない。この結合を解いて吸収できるようにするため、新大陸全域で文化として生まれたのが、トウモロコシ料理にアルカリ成分を加えるという習慣なのだ。貝殻を焼いてできた灰(CaOH2が含まれる)を加えたり、特定の樹木を燃やした灰を入れたり、あるいは天然の草木灰(KOHが含まれる)を利用したりと、その方法は地域によっていろいろだった。いずれにしても、料理にアルカリ成分を加えるという適切な処理を施すことによって、トウモロコシの結合型ナイアシンが吸収されやすくなり、そのおかげでペラグラを防止することができたのだ。

世界中でトウモロコシを主食にしている地域は少なくないと思いますので、もし南米に移住する機会があれば「独自の方法で調理しないこと」「食べ過ぎには気をつけること」の2点を徹底したいですね。

トウガラシは毒?

ヒト以外の動物はトウガラシを食べない。ほとんどの香辛料の栄養素は無いに等しい。多くの香辛料の味や効能を特徴づけている成分は、昆虫や菌類などの動物を寄せつけないために進化させた忌避物質である。にも関わらず、私たちが料理に香辛料を加えるのはなぜでしょうか。

その主な理由について、生物学者のジェニファー・ビリングさんとポール・シャーマンさんが明らかにしたのがこちらです。

①香辛料には実際に抗菌作用がある。世界中で最も広く使われているの香辛料は、細菌の繁殖を抑える効果が最も高い香辛料でもある。防カビ作用をもつ香辛料もある。(略)

②暑い地域に暮らす人々ほど香辛料を多用し、しかも抗菌性の高い香辛料をよく使う。(略)

③伝統料理のレシピでは、香辛料の効果をうまく活かす使い方がなされている。オニオンやガーリックのような、加熱しても抗菌作用が弱まらない香辛料は調理の途中で加える。一方、コリアンダーのような、抗菌作用が熱で失われてしまう香辛料は、最後に生のままで加える。

これ、かなり興味深い話だと思いませんか。本書では「トウガラシはなぜ美味しいのか」というテーマの導入部分としてこの話がなされていましたが、筆者の主張よりこちらのサマリの方が個人的には印象に残りました。

よくよく考えたら辛いものを好んで食べるなんて、ヒトってただのドMですよね(特大ブーメラン)

ココイチの10辛とか楽勝だわ
いざ、実食! まず、手始めにビーフカレーを一口すくいます。 見た目は普通のココイチのカレーで、本当に辛いの?と疑いました。 ん〜〜久々のカレーは美味しいです!! でも、普通...

肉の分配タブーを守るのは自分のため?

多くの狩猟採集民の集団では、大きな獲物の肉を分配するタブーなどが決められています。

このタブーを違反するとその後狩猟に出かけたときに失敗すると信じられているために、集団間で強い監視作用が働いています。また、特定の部位を食べると病気になりやすいというの教えもあるので、それぞれの個人が純粋な自己利益のために行動するようになります。

このタブーに関する文脈で取り上げられた三つの心理作用がこちらです。

①私たち人間はもともと肉嫌いになりやすい素地がある。動物の屍肉には危険な病原菌が含まれていることが多いからだ。それゆえ、どんな食物に関するタブーよりも、肉食にまつわるタブーが受け入れられやすい。

②このようなタブーは社会規範になっているので、それを破る者がいないかどうか、他者が常に監視の目を光らせている。(略)

③だれもが成長期にこのルールを身につけ、以後、ルールを破ることはない。したがって、タブー部位を食べても平気だったということを経験することがない。まれにタブーを破る人がいて、破った後でたまたま不運や病気に見舞われたりすると、強く印象に残り、すぐうわさが広まる。一方、タブーを破っても、ずっと何も起こらなかった場合は、記録を付けてでもおかないかぎり、そのまま忘れ去られて記憶に残らないことが多い。

この③に関しては、私も実際に小学生のころに全く同じことを考えたことがあり、少しノスタルジックな気持ちになりました。

私は根がマジメなので(←自分でいうな)、おそらくこの時代にタイムスリップしたとしてもルールは絶対に破らない自信があります。

暖かい国の言語には母音が多い?

音の聞こえ度について論じた段落の中で、サクッと紹介されていたのがこちらです。

母音にも子音にもいろいろな聞こえ度のものがあるが、概して、子音よりも母音の方が、はるかに聞こえ度が高い。当然ながら、聞こえ度の高い言語には母音が多く(ハワイ語など)、聞こえ度の低い言語には子音が多い(ロシア語など)という傾向がある。(略)

温暖な地域ほど、屋外での仕事、遊び、料理、休養の時間が長くなるが、屋外では屋内に比べて、相手との距離、騒音、劣悪な音響環境といった問題に直面しやすい。(略)

温暖な地域の言語は、寒冷地の言語に比べて母音の数が多く、しかも聞こえ度の高い母音 a がよく使われる傾向がある。子音についても、温暖な地域の言語では、聞こえ度の最も高い n, l, r のような子音がよく使われる。それに対して、寒冷地の言語では、deep の i ような、聞こえ度の最も低い母音がよく使われる。(略)

風の強い極寒の地の人々が口を大きく開けて喋るのを控えるのは、体温喪失を避けるためかもしれない。

温暖な地域ほどより遠方の相手と屋外でコミュニケーションをとることが多く、母音の数が多くなるとうロジックには納得させられました。

ただこれは私の地元である、みゃーくふつ(宮古島の方言)には当てはまっていません。私たちの方言は母音が多いというより、拗音(ぁ,ぃ,ぅ,ぇ,ぉ,ゃ,ゅ,ょ)・音引き(ー)・濁音(゛)などが多い傾向にあるからです。もしかしたら沖縄の方言はこのロジックの例外に分類されるのかもしれませんね。

安いワインを渡すとWin-Winに?

他者の選好に基づく文化的学習が自分のなかでの評価にも影響する、という文脈で紹介された具体例がこちらです。

参加者たちに5種類のワインを飲み比べをしてもらった実験がある。5種類のワインのボトルにはそれぞれ、5ドル、10ドル、35ドル、45ドル、90ドルの値札が付けられていた。しかし実際には、飲み比べに用いられたワインは3種類しかなく、そのうちの2種類に、5ドルと45ドル、10ドルと90ドルの値札が付けてあったのだ。ご多分にもれず、実際にはまったく同じワインであっても、高額なワインのほうを、参加者たちは美味しいと評価したのだ。(略)

何度やっても、ワインのテイスティングの訓練を受けていないアメリカ人は、実際には安いワインのほうを美味しいと評価する。(略)となると、贈り物戦略としては、普通のアメリカ人にワインを贈るときは、安いワインを買ってきて値札を剥がし、ものすごく高いワインなのだと言って、渡すのがいいということになる。

これはあるあるですよね。私も五千円以上のワインになると全然味の違いがわからないので、この戦略をとられるとまんまとハマってしまう気がします。

日本一のソムリエ森覚さんによると、高いワインと安いワインは以下のように見分けるそうです。

  1. 高い色のワインは色が濃い.(ブドウの皮を果汁に漬け込む時間が長いため)
  2. 出されたワインの匂いをかぎ グラスを回してもう一度匂いをかぐ、そのときにフルーツ以外の香りがしたら高いワイン
  3. ワインを少し口の中でグチュグチュさせて、歯磨きのような感覚があれば高いワイン(ワインの渋みを出すタンニン成分が含まれている証拠)

罰金を課すのは逆効果?

人間はみな世界を同じように捉え、同じことを望み、新たな情報や体験を同じように受け止めるという思い込みがある、ということを紹介する文脈で用いられた具体例がこちら。

イスラエル北西部の町ハイファでは、託児所に預けた子どもを、親が約束の時間に引き取りに来ないので困っていた。そこで、6か所の託児施設では、経済学の処方箋に従って、遅刻した親には罰金を科すことにした。人間は誘因に反応するのだとしたら、罰金を科せば、遅刻する親は減少するはずである。ところが実際には、遅刻する親の割合が2倍に増えてしまった。それから3か月後、罰金制度は廃止されたが、遅刻傾向はそのまま変わらず、罰金を科す前のレベルに戻ることはなかった。(略)

それまでは、時間を守らなかったことを恥じ、託児所スタッフに申し訳ないと思っていた人が、遅刻しても延長保育をお金で買えるのだと感じるようになってしまったのだ。遅刻を減らすには、罰金を科すのではなく、明示的な規範を定めて時間遵守を徹底させるとともに、親と託児所スタッフの人間関係を深めるべきだったのである。

罰金制度をもうけたことで逆に状況が悪化したというのは面白いですよね。

個人的には、罰金額をうんと高くして親が遅刻しないようにすると、親も遅刻しづらくなりスタッフも応分の給料がもらえるので良いのではないか、と思ったのですが現実的ではないかもしれないですね。(そもそも親が払える可能性が低い)