“好きな研究”という幻想

この記事は約6分で読めます。
sponsored link

“好きな研究”という幻想

「研究室に配属されたら自分が興味のある分野の研究をしたい!」

理系なら誰もが一度は考えたことがあるのではないだろうか。自分の好きな研究に好きなだけ時間を費やし、優秀な教授や先輩に囲まれて自己研磨に励む日々。何を隠そう当時 (大学3年) の私も、そんな希望を抱えた学生の一人だった。あの研究室の配属ガチャが起こるまでは。

研究室見学 (11月中旬)

私が所属する慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科 (以下、SDと呼ぶ) では、大学3年の11月中旬に研究室見学が行われる。例年は実際の研究室に足を運ぶらしいだが、私の代はCOVID-19の影響で全てオンライン開催となった。(早い人は大学1,2年時点で教授にメールを送り個別に研究室を訪問しているそう)

私はこの時点で「データ分析系に進みたい」と考えており、SDでそれに該当する研究室は1つしか無かったため、そこ以外は正直オンラインでも参加したいとは思わなかった。そして参加しなかった。

予備調査提出 (11月下旬)

11月下旬になるとSD全体で予備調査を提出し、その数日後に各研究室の倍率が公表される。(第一志望を1つ、第二志望を3つ、第三志望を5つ)

SDに設置されている研究室の数はだいたい20〜30程度で、それぞれ定員は5人程度であることが多い。年によってばらつきはあると思うが私たちの代では、高橋研がぶっちぎりで人気だった。三田研・伊加賀研・Jorge Aimazan研などは建築系の研究室で、毎年高い人気を誇っている。(慶應で建築が学べるのはSDだけなので、例年倍率が高い)


※ 2021年度研究室配属・予備調査結果

本調査提出 (12月上旬)

12月上旬になると配属の本調査提出があり、定員をこえた研究室のみ追加で面接・選考を行う。私が志望する研究室では提出後すぐに面接があった。

面接や選考に関しては研究室によりけりだが、SDでは基本的にGPAは見られないように思う。ただし極端に低い場合や留年している場合を除く。

オールラウンドに成績を獲得できる学生というよりは「その分野にどれだけ情熱があるか」「今の研究室の学生と(性格的に)マッチするかどうか」などが見られているとのこと。

面接 (12月上旬)

私が志望する研究室は本提出の数日後に面接の日程が組まれた。面接はZOOMで行われたのだが、入室すると先生1人・研究室の学生15人で、やや圧迫感を感じた。

面接では「この研究室を志望する理由」「院進するか」「休みの日は何をしているか」「最近気になったニュースは何か」「ゲームは好きか」などを聞かれた。私はデータ分析に興味がある、ゲームはやってない、などありのままの自分を表現した。後半には留学生が英語で「最近あった面白い出来事」などを聞く場面もあったが、それもジョークを交えながら自信をもって返答できた。

面接結果発表 (12月下旬)

先生との会話も盛り上がり自分の強みも表現できたので、面接後は100%受かったと慢心していた。

ただ蓋を開けてみると結果は落選。正直、自分でもなぜ落ちたのか分からなかった。(おそらく研究室の先輩方にあまり気に入ってもらえなかったように思う)

結局、第2志望で書いた3つの研究室のうちの1つ (自分の中での第4志望) に配属されることとなった。しかも生物系。過去記事でも紹介しているが、私は大学1年の頃に生物の単位を落としており、小学校の生物のテストではクラスでほぼ最下位というくらい生物に関しては苦手意識がある。

ただ研究は授業とは違うので「たとえ分野が生物であっても自分の好きなデータ分析と掛け合わせればきっと面白い研究ができるだろう」と安易に考えており、研究に対する不安はそこまで大きくはなかった。

研究室メンバー発表 (1月上旬)

年があけてすぐに研究室のメンバーが発表された。早いところでは12月時点でメンバーが知らされていたところもあったらしい。メンバーをみると以前から交流のあった友達の名前があり、ホッとすると同時に喜びの一報をLINEで伝えた。

正直、今の研究室は先生の人柄の良さで決めたようなものなので、あとは同期がどんなメンツか、それが重要事項であった。「研究室は内容よりもメンバーで決めた方がいいよ!」と力説する先輩も少なくないので、その点が満たされたのは良かったのだと思う。

先輩とのご対面 (3月中旬)

私の研究室では3月中旬に一度研究室に足を運び、一部の先輩と対面するというイベント (研究室大掃除) があった。まだ同期には会えていないが先輩方と会って話せたのは良かったように思う。

中にはこの時点でセミナーを開始したり研究の触りを指導する研究室もあるので、春休み期間中のイベントに関しては研究室によりばらつきがある。

春季セミナー (3月下旬)

3月下旬になると春季セミナーという名の下に、先輩達の研究内容を傾聴するイベントが始まった。春季セミナーは自分の卒論のテーマの方向性を決めるためのもので、その中に先輩に色々と質問をすることもできる。

ただ先輩方のプレゼンを聞いていると、やや生物色が強すぎるように感じた。そこで先輩方に自分の興味のある分野を伝え、それを研究することは可能かという質問を投げかけてみた。すると「できないことはないが基本的に既存の先輩の研究を引き継ぐことになる」とのことだった。

ここで私は初めて「研究テーマは自分で選べない」という事実と向き合うこととなった。

しかし冷静に考えてみればその通りである。研究未経験の学生が4〜12月のたった8ヶ月で論文を発表する、すなわち世の中に新たな発見を提示するというのは簡単な話ではない。

さらに言えば、無知の学生が抱いている研究テーマなどは既に世に出尽くされた可能性だってあるし、先生側としても既に洗練されたものをさらにブラッシュアップして欲しいというのが本音だろう。

つまり、「何代にも渡って蓄積された先輩方の研究テーマを引き継ぎそこに付加価値を加える」ということが至極真っ当な判断であり賢明なのである。(ただニッチな分野であれば学部生でも開拓できる可能性もあるし、既に知見を持っている学生であればまた話は変わってくる)

研究テーマ提出 (4月上旬)

春季セミナーが終わると先生から研究テーマを提出してほしい、との連絡があった。提出書をみてみると既に研究テーマ4択が用意されており学生がそこから選択するという形式。

つまりこの時点で「好きな研究」が幻想となってしまったのだ。

私は院進しないのでそこまで心理的ダメージはないが、人によっては少しガッカリしてしまう可能性もあるだろう。特に明確な研究テーマを固めていた人なら尚更である。

研究活動を3ヶ月行ってみた感想 (7月末)

自分が全く興味のない研究室に配属され、早3ヶ月が経った。

そして結論から言うと「圧倒的地獄」である。本当につまらない。生物系なので週の大半が実験になるが、手順がとても細かく思考停止で誰でもできる作業を淡々とこなしているという印象である。

私はこれまで長期インターンで「好きなことでお金を稼ぐ」ということに慣れてしまっているので、全く興味がない単純作業に長時間拘束されるのが精神的にかなりきつい。

そして何より研究室の雰囲気も冷めきっているので、メンバー間でご飯や飲みにいくといったことも一切ない。(おそらく先輩方がそういったワイワイ系が好きでないように思う)

とまぁ、ここまでネガキャンを続けてみたが「研究に興味がない & 先輩の雰囲気が良くない」と地獄の一年間が待っていますよということを、後輩たちは強く覚えていて欲しい。私の二の舞にならないためにも「研究室見学」はなるべくした方が良い。できれば実際に足を運んで。

あと、これは他研究室の教授や友人達から教えてもらったテクニックだが「第一志望 + 第二志望のみを書く」「あえて第三志望に高倍率な研究室を書く」というのも有効らしい。断定はできないが。

結論

さて、やや話が少し発散してしまったが「大学では必ず好きな研究ができるわけではない」ということを本エントリの結論として締めくくりたい。理由は以下の3つである。

1. 全員が希望する研究室に入れるわけではない(定員は5名前後)

2. 学部生が8ヶ月でゼロから結果を出すのは難易度が高い

3. 先輩方の洗練されたテーマを引き継ぐ方が賢明