日本の大学って世界ランキング低すぎない?

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世界大学ランキングにおける日本の現状

まずは THE World University Rankings 2022 (2021/9/2発表) で、TOP1000にランクインした国内の大学についてみていきます。

順位 大学名
35位 東京大学
61位 京都大学
201-250位 東北大学
301-350位 大阪大学、東京工業大学
351-400位 名古屋大学
401-500位 産業医科大学、横浜市立大学、
501-600位 北海道大学、九州大学、東京医科歯科大学、筑波大学
601-800位 会津大学、関西医科大学、慶應義塾大学、
神戸大学、日本医科大学、東京都立大学
801-1000位 藤田医科大学、広島大学、東京慈恵会医科大学、順天堂大学、
近畿大学、久留米大学、新潟大学、帝京大学、早稲田大学


昨年に続き、TOP100にランクインした国内の大学は「東大(35位)」「京大(61位)」の2校のみでした。

政府は2013年の日本再興戦略で「2023年までに世界大学ランキングTOP100に “10校以上” 入ることを目指す」としていましたが、2022年現在ではTOP200にすら東大・京大しかランクインしていません。

ところで、国を挙げてまでこのランキングの順位を上げる必要があるのでしょうか?

おそらく読者の中にはこの順位を軽視している方も少なくないでしょう。しかし、このランキングは「日本の国力を左右する重要なものである」と断言できる理由があります。

  1. 優秀な留学生や研究者が日本に来なくなる
  2. 海外の研究機関と共同研究がしづらくなる
  3. 日本人が留学で行ける大学の幅が狭まる

海外のエリートが日本に来ない

学生が留学先を検討する際にまずみるのが、世界大学ランキングです。

留学するときは親や周りの人に相談すると思いますが、もちろん他国の大学のレベル感なんてわかるはずがありません。我々がシンガポールやオーストラリアの大学を知らないように、海外の方からすれば東京大学すらほとんど知られていないのです。

そこで留学生は世界大学ランキングを参考に、研究内容や学費などと合わせて進学先を検討するわけですが、わざわざ評価の低い大学へ行こうとする人は少ないと思います。研究者を志望するような優秀な学生であれば、尚更です。

つまり「順位が低いと海外のエリートが日本に来ないため、国全体としての研究力も低下し、翌年も同じ結果になる」という負のループに陥るのです。

共同研究がしにくくなる

先ほど同様、学生だけでなく研究者も世界大学ランキングを参考にしています。

例えば「共同研究」を行う場合、いくつかの検討事項 (e.g.,コネクション、研究成果、研究設備) があると思いますが、その中でも “コネクション” というのは非常に重要です。

コネクションを作る方法としては、大きく「自分から声をかける場合 (知人のツテ)」「相手から声がかかる場合 (自分が結果を出している)」の2種類あります。後者は運要素が大きいので今回は考慮しませんが、前者はどうにかすることができます。

というのも、研究の世界では「ポスドク (Postdoc)」という給料をもらいながら (他大学で) 研究をするという習慣があるのですが、その進学先を決めるために研究者が参考にするのが世界大学ランキングです。
※もちろん建前では研究内容を重視しますが、将来的な出世などを考えると「より権威性の高い大学に行きたい」と考えるのが自然です。

世界大学ランキングの順位が高いと、優秀な研究者がポスドク先としてその大学を選ぶ確率が高くなり、最終的に「ポスドク先でできたコネクションで共同研究を行う」ことができます。

また「共同研究は “論文数”,  “被論文引用数” にもカウントされる」ので、結果的に翌年の順位も上げることができる、という好循環が出来上がるのです。

留学先が制限される

ここまでは海外の方が日本の大学へ来るケースを考えてきましたが、逆も然りで、日本の順位が低いと「国内の学生がハイレベルな留学先を選択できない」ということにつながります。

留学は主に、提携先の大学へ留学する「交換留学 (費用補助, 単位交換制度あり)」と、自分で出願する「私費留学 (サポートなし)」に分けられます。

費用や卒業単位などの面を考えて多くの学生は交換留学を選択するのですが、この時の留学先は世界大学ランキングの順位が関係してきます。それは、評価の高い大学は常に学生から人気が高い傾向にあるからです。

つまり「国内の優秀な学生の進学先が狭まる」という意味で、世界大学ランキングの順位は重要となります。

世界大学ランキングの指標と意義

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Source: The Times Higher Education

大カテゴリ 小カテゴリ
教育 (30%) 研究者間での大学の評判 (15%)
学部生あたり博士号取得者率 (6%)

学生あたり教員数 (4.5%)
博士号取得者率 (2.25%)
教育事業収入 (2.25%)
研究 (30%) 研究者間での研究の評判 (18%)
研究事業収入 (6%)
論文数 (6%)
論文引用数 (30%)
国際観 (7.5%) 留学生比率 (2.5%)
外国人教員率 (2.5%)
国際共同研究 (2.5%)
特許収入 (2.5%)

上の評価項目からわかる通り、世界大学ランキングの順位は “研究の評価” が大きなウェイトを占めています。

例えば、全体の30%を占める論文引用数では「産業医科大学(97.8)、横浜市立大学(93.0)、関西医科大学(80.2)、帝京大学(69.0)、日本医科大学(64.7)、東京慈恵会医科大学(61.4)」の大学が、東大(58.2)、京大(58.3) のスコアを上回っています。

他にも、全体の7.5%を占める国際観では「会津大学(72.8)」が 東大(40.2)、京大(38.2) を抑えブッチギリのトップであったり、全体評価の2.5%を占める特許収入では「名古屋大学(97.9)、東北大学(97.2)、大阪大学(90.2)」が 東大(88.1)、京大(80.8) のスコアを上回っていたりします。

しかし、これらの指標にも5つの懸念点があります。

  1. 各指標の点数内訳の合理的説明が無い
  2. 学生のバックグラウンドを考慮した指標が無い
  3. 論文を参考にする際のデータベースに偏りがある
  4. 職員と学生数の比率が教育レベルの高さに繋がるのか
  5. 海外の大学は卒業率が低いがそれでも教育レベルが高いと言えるか

※「学生のバックグラウンドを考慮した指標」とは例えば、東大生の卒業後の年収が高い事は「東大の環境」と「東大生の家庭環境」のどちらの影響が大きいかという問題と同じです。東大生の親は基本的に年収が高い層なので、子も年収が高くなるのは当然のことであると考えるのか否かということを言及しています。

日本の順位が上がらない理由

文系の院進率が低い

日本は海外に比べて、文系の学生が大学院へ行かない傾向があります。

世界大学ランキングでは「博士進学率に関する指標(8.25%)」のウェイトが高く、院生が少ないことは「論文に関する指標(36%)」にも影響してくることから、文系が大学院に行かないというカルチャーが順位の低下に影響しているのかもしれません。

日本語論文はカウントされない

「論文数(6%)」「論文引用数(30%)」など論文系のスコアは、英語系の論文しかカウントされないため、英語圏の大学が有利になります。

このランキングを作成しているTHEは欧米の機関なので致し方ないですが、論文を出すスピードに関しても非英語圏の国はやや不利かなという印象を受けます。

研究者の流出

海外の大学は札束をもって優秀な人材をスカウトすることが多いのですが、日本では学長より高い給料 (←そこまで高くない) を出すことはできないので、ほとんどの場合優秀な人材を国外から誘致することはできません。

補助金の少なさ

実は世間で騒がれているほど日本の基礎研究費は少なくないのですが、「政府負担の基礎研究費の割合が低い」という現状があります。さらに投資額も年々減少しているので、国際競争力が低下するのは避けられないといえるでしょう。

教授になれない

これは有名な話ですが「日本では教授になるまでの道が非常に長い」です。これは裁量権の小さい冬の時期が続くことを意味するので、研究者にとってはネガティブな印象を受けてしまいます。

例えば、日本で脳科学の教授になろうと思うと、博士号取得後5年経ってその後助教授になれるのが1/20と言われているのですが、アメリカでは博士号取得後数年間研究をするとほぼ確実に助教授になることができます。

日本が少しでも順位を上げるには

  • 積極的に欧米の大学と共同研究を行い、論文関連のスコアを上げる
  • 外国籍の教員を積極的に採用し、国際観のスコアを上げる
  • 外国人留学生を積極的に誘致し、国際観のスコアを上げる
  • 大学発の企業をサポートし、そこで得た収益を設備投資や研究者の誘致にあてる
  • 政府が配分する研究費を世界大学ランキングと関連づけ、全ての大学を躍起にさせる