世界大学ランキングにおける日本の現状
まずは世界大学ランキングでTOP800に入った25の大学を見ていきます。
日本の大学はTOP100に東大(36位)・京大(65位)の2校しか入っていません。
安倍首相は2023まで年に「日本の大学をTOP100に10校入れる」と宣言していますが、期限まであと3年となかなか厳しいのが現状です(参考)
ところで、国を挙げてまでこのランキングの順位を上げる必要があるのでしょうか?
おそらくこの記事の読者の中にも「このランキングはさほど重要でない」と考えている人も少なくないでしょう。
しかし、THEが発表する世界大学ランキングの順位は「日本の国力を大きく左右するほど重要なものである」と断言できます。
なぜなら日本の順位が低いと、3つのデメリットがあるからです。
- 優秀な留学生や研究者が日本に来なくなる
- 海外の研究機関と共同研究がしづらくなる
- 日本人が留学で行ける大学の幅が狭まる
優秀な人材が日本に来なくなる
海外の大学へ留学しようと思った時まず参考にするのが「THEの世界大学ランキング」です。
優秀な学生や研究者は常にハイレベルな環境を求めるので、日本の順位が低いと優秀な学生や研究者が日本に来なくなります。
そして優秀な学生や研究者を呼び込めなければ、結果的に世界大学ランキングや研究力も低下し、翌年も同じ失敗をするという負のループに陥るのです。
海外の研究機関と共同研究がしづらくなる
世界大学ランキングは、その大学の信頼度にも直結するため海外の研究機関と共同研究をしにくくなります。
共同研究は「論文数」や「被論文引用数」にもカウントされるので、大学のブランドを守る上でもとても大切です。
日本人が留学で行ける大学の幅が狭まる
自分の大学のランキングの順位が低いと、留学の選考に影響が出る可能性があります。
もちろん志望動機やGPAなども大事ですが、いくら成績が良くても大学のレベルが低ければ全く評価されません。
海外では東大・京大以外の大学はほとんど知られていないので、世界大学ランキングの順位を上げることは極めて重要なことなのです。
世界大学ランキングの指標と意義
(出典:The Times Higher Education)
「教育」30%
・研究者間での大学の評判(15%)
・学生あたり教員数(4.5%)
・博士号取得者率(2.25%)
・学部生あたり博士号取得者率(6%)
・教育事業収入(2.25%)
「研究」30%
・研究者間での大学内研究の評判(18%)
・研究事業収入(6%)
・論文数(6%)
「論文引用数」30%
「国際観」7.5%
・留学生数比率(2.5%)
・外国人教員率(2.5%)
・国際共同研究(2.5%)
「特許収入」2.5%
前回の記事でも紹介した通り、世界大学ランキングは研究の評価が順位に直結します。
例えば全体評価の30/100を占める論文引用数では「産業医科大学(99.8)、帝京大学(95.9)、藤田医科大学(91.1)、横浜市立大学(86.2)、関西医科大学(70.0)」の大学が高いスコアを獲得しており、「東大(60.7)、京大(59.9)」を大きく上回っています。
藤田医科大学や帝京大学が早慶を抑え、世界大学ランキングで上位にいるのにはこのような背景があるのです。
他にも全体評価の7.5/100を占める国際観では「会津大学(66.8)」が「東大(38.2)、京大(33.7)」を抑えブッチギリのトップであったり、全体評価の2.5%を占める特許収入では「東北大学(86.4)」が「東大(77.4)、京大(66.2)」を大きく上回っていたりします。
しかし、これらの指標にも5つの懸念点があります。
- 各指標の点数内訳の合理的説明が無い
- 学生のバックグラウンドを考慮した指標が無い
- 論文を参考にする際のデータベースに偏りがある
- 職員と学生数の比率が教育レベルの高さに繋がるのか
- 海外の大学は卒業率が低いがそれでも教育レベルが高いと言えるか
※「学生のバックグラウンドを考慮した指標」とは例えば、東大生の卒業後の年収が高い事は「東大の環境」と「東大生の家庭環境」のどちらの影響が大きいかという問題と同じである。東大生の親は基本的に年収が高い層なので、子も年収が高くなるのは当然のことであると考えるのか否かということ。
日本の大学が順位を上げる事が難しい本当の理由
文系が大学院へ行かない
日本は海外に比べて、文系が大学院へ行かない傾向があります。
世界大学ランキングでは「博士進学率に関する指標(8.25%)」の割合が高く、大学全体としての「論文に関する指標(36%)」にも影響してくることから、文系が大学院に行かないことと世界大学ランキングは密に関わっているのです。
英語系の論文しかカウントされない
ランキングが英語ベースなので「論文数(6%)」「論文引用数(30%)」など論文系のスコアは、英語系の論文しかカウントされません。
つまり日本語で書かれた論文は質の高いものであってもノーカンなので、英語圏以外の大学は必然的に順位が下がってしまいます。
優秀な研究者を雇える仕組みが無い
日本のは学長を頂点としたピラミッド構造なので、学長より高い給料は出すことができません。
一流の研究者達は莫大な金額でスカウトされることが多いのですが、日本では優秀な研究者を雇える仕組みがないので海外から呼び込めないのです。
政府負担の基礎研究費の割合が他国に比べて低い
実は世間で騒がれているほど日本の基礎研究費は少なくないのですが、政府負担の基礎研究費の割合が比較的低いという現状があります(参考)
しかもその金額も年々減少しているので、一流の研究者達が海外へ流れ結果として日本の研究力が低下しているのです。
教授になるまでの道が長いので優秀な学生が海外へ行く
これは有名な話ですが、日本では教授になるまでの道が長いので優秀な学生が海外へ行ってしまいます。
例えば、日本で脳科学の教授になろうと思うと、博士号取得後5年経ってその後助教授になれるのが1/20と言われているのですが、アメリカでは博士号取得後数年間研究をするとほぼ確実に助教授になれるのです(参考)
日本が少しでも順位を上げるには
欧米の一流大学の教授陣と共同執筆をする
世界大学ランキングの順位を上げるには、海外の一流大学と共同執筆するという手もあります。
これはどの国でも推奨されているのでセコい事では無く、日本ももっと積極的に狙うべきなのです。
著名な研究者を募って質の高い論文を量産する
基本的に大学のレベルを上げるには「著名な研究者を募って質の高い論文を量産する」ことが最も効率が良いとされています。
一流の研究者が質の高い論文を出し続ければ自然と優秀な人は集まり、他の分野も自然と伸びていくのです。
KPIを設定し本気で世界大学ランキングを狙いに行く
ランキングの順位を上げるには広島大学のように「KPIを設定し本気で世界大学ランキングを狙いにいく」ことも大切です(参考)
国内の他の大学も見習っていきたいですね。
政府や大学職員の英語力を上げ、海外との交渉を上手く進める
大学のレベルを上げるには「海外の研究機関と提携を組んで協力する」ことも大切なのです。
しかし政府にも大学職員にも英語力と交渉の両方が上手い人は少ないので、海外の研究機関と大学教授が直接交渉しているという悲しい現状があります。
これでは教授が本来の研究に没頭できないので、「政府や大学職員の英語力を上げ、海外との交渉をうまく進める」必要があるのです。
これから日本の大学は何に取り組み、世界の中でどのような立ち位置になるのでしょうか。
政府に頼るのではなく、私たち若者が先導してランキングを上げていきたいところですね!ではまたッ👋